俳優おたくの掃き溜め

舞台や若手俳優のおたくが好き勝手書くところ

▫️「推しの為に」っていう言葉の危うさ▫️


あなたは彼に夢を叶えてほしいの?それとも、彼の夢を叶えた恩人になりたいの?同じことでも全然違うことよ、これ。」




推しを応援するにあたって平然と「推しの為に」と言う人がとても苦手です。その思考そのものを咎めたい訳ではないけど、少なくともおたくとしてあんまり仲良くは出来ないかなって思ってしまいます。


冒頭の台詞を読んだだけで作品名が判った人、あなた魔法少女好きですね?笑。魔法少女まどか☆マギカの登場人物、巴マミ美樹さやかという登場人物へ忠告として言った台詞です。

なんとHuluで全部観れちゃう!ていうか私自身この作品リアタイでは観てないんだけど、2011年のアニメなんだね!びっくり!


この忠告を受けた美樹さやかの生き様を、ぜひ「推しの為に」と盲信しているおたく達に知って欲しいです。Huluで無料試聴可能なのでとりあえず観てくれって感じなんだけど、忙しい人の為に下記に美樹さやかWikipediaから一部抜粋。

人物
まどかと共に魔法少女の世界に足を踏み入れる。幼馴染の上条恭介に一途な想いを寄せており、治療不可能な怪我によってバイオリン奏者になる夢を絶たれた恭介を救うため、巴マミの死後、恭介の腕の治癒を願ってキュゥべえと契約、魔法少女となる。だが、生前のマミからは、自分の願いを他者の願いを叶えるために使うことの危うさを指摘されており、やがてその指摘通りの問題に直面することになる。
(中略)
しかし契約により自分が人間ではないものに変質していた事実に衝撃を受け、さらに恭介と親友の志筑仁美との三角関係に直面したことをきっかけに、人間ではなくなってしまった自分は恭介と結ばれることができないと思い詰めるようになる。次第にまどかや杏子の言葉にも耳を貸さなくなり、心身共に消耗しつつ無謀な戦いを続けた結果、急速にソウルジェムは穢れを溜め込み、信念も見失った末に「人魚の魔女」へと変貌してしまう。

より詳しい解説と考察はこちら
【まどマギ】人魚の魔女オクタヴィアの正体やテーマ、考察まとめ
美樹さやかと上条恭介の関係性について特化した考察
美樹さやかと上條恭介の関係について:総てはオレンジの為に

もうとりあえず本編観てくれって話なんですけど、とにかく好きな人を自己犠牲を持って救った彼女の悲しい結末…。このアニメをたまたま観た当時は本当に嗚咽して泣きました。ちょうどこのブログを作った頃くらいだったと思います。

それで先の2つめに貼った考察の美樹さやかと上條恭介の関係について:総てはオレンジの為にを読むと本当に「推しの為に」っていう行動の危うさを表しているように思います。一件恭介の為を想い毎日お見舞いをして献身的なさやか。傍から見てもそれはそれはとても素敵なことなのかもしれません。でも当の恭介が本当にそれを良きこととして受け取っていたかというのは、先の2つの考察でも書いてあるとおりかなり怪しいところがあります。上条恭介はクソ野郎だと評価する人も多いけど、中学生男子が取る行動としては至極真っ当なように私には思えます。



自分が(もしくは世間一般が)相手の為を思って行う言動も、相手からは必ずしもそれが望まれているとは限らず、それは思い込みすれ違うほどに「独りよがり」になる。そしてその真実に気付いた時、自分のしてきた事が意味をなさなくなった時、人は誰かを呪わずにはいられなくなってしまうのかもしれません。

誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない。あたしたち魔法少女って、そういう仕組みだったんだね。…私ってほんとバカ。

※魔女になる前、最後に美樹さやかが言った言葉。

この流れがすごいおたくっぽいなぁと思う代表的な所で言うと、若手俳優が炎上した時。カノバレなり何なりで若手俳優が炎上した時、それまで(そのおたく本人的には)献身的に彼の活動を応援してきたおたく達は一気にアンチになり愚痴垢になり暴れ狂う姿をよく目にします。それを見ながら「あーソウルジェム濁りきって魔女になっちまったな…」とまどマギ信者末端の私は思うのです。

推しの為を思い推しの為に時間とお金を捧げ続け自己犠牲を払ってきたおたくという魔法少女は少しずつ穢れを溜め込み、そして推しの炎上等で自身の頑張りが意味をなさなくなった*1時に、おたく魔法少女は絶望して魔女になってしまうのです。みんながみんなそうという訳では無いけど。


あとは気に入らない制作や同担を叩きまくるおたくも、かなりソウルジェム濁ってんだろうなぁって思います。鍵垢とかで愚痴るのは別としてね。確かにリアルに推しにとってそれらが害悪なのかもしれないけど、それって本当に推しが「あの人(制作)害悪なんで潰してください」なんて言ったのだろうか?「思ってても言えないんだよ」というのも確かにそうなのかもしれないけど、そう言えちゃう人ってあれなんですか人の心読めちゃう人なんですかね?もちろんこれも憶測の域は出ないけど、もしかしたら推しは「もうどうでもいいからみんな大人しくしてくれ」って思ってて、燃えたり争われることは望んでないのかもしれない…って思わないんでしょうか。




結局なんでちゃんとした確証もないまま「推しの為に」って盲信するおたくが苦手かというと、そういう人はきっといつか何かあった時に魔女化する事がかなり懸念されるからなんです。「あんなに貴方の為に頑張ってきたのに、応援してきたのに、裏切られた」って、愛情が憎しみに変わりそうで。いやそうなるのは仕方ないんだけど、それで周りにブチ切れ回って病み病みの病みになり、厄災を振りまく魔女になっちゃいそうで怖いです。私も言うて根がネガティブなので、そこに気持ちが引っ張られそうになっちゃう。推し活は楽しんでなんぼだと思ってるから、必死に自己犠牲を続けて、それを正義としているのが怖い。

あとこれはあくまで個人の経験上でしかないけど、通うのも貢ぐのも「推しの為ではなく結局私の独りよがりです。単純に私がそうしたくてやってる病気なんです。」って自覚しているおたくの方が魔女化しにくい*2気がします。きっと行動理念が「推しの為に」ではなく「結局は自分の為」という自覚があるからだと思います。何もかもをちゃんと自分の判断自分の責任って動いてるからなのかな。



まどマギに話を戻すと。

魔女化した美樹さやかは結局倒されるんですけど*3、その後最終回でその魂はとある事象によって救われることとなります。その時に彼女は上条恭介の演奏会に魂として現れ、彼の演奏と傍で見守る仁美の姿を見つめながら、こう言うんです。

「…うん。これでいいよ。そうだよ。私はただ、もう一度、アイツの演奏が聴きたかっただけなんだ。あのヴァイオリンを、もっともっと大勢の人に聴いてほしかった。それを思い出せただけで、十分だよ。もう何の後悔もない。まあ、そりゃ…ちょっぴり悔しいけどさ。仁美じゃ仕方ないや。恭介にはもったいないくらいいい子だし…幸せになって…くれるよね」


はーーー美樹さやかまじ良い子!天使!!!



魔女化に至りそうなおたくも、どうかこの美樹さやかのような後悔を残さない推し活を過ごして欲しいなぁって思うし、何故推しのことを好きになったのか、どんなところが好きだったのか、忘れないでいて欲しいなぁって思います。推しの為にっていうのは確かに素敵な気持ちだけど、その気持ちの裏にある危うさとリスク、本当に推しにとって為になることってなんだろうっていうこと。推しの為にやってるのか、それとも結局は見返りを求めていて、自分の為にやっているのかをちゃんと考えて欲しいです。自分のことも大切に。愛情が憎しみに変わり、魔女化しないように。もちろん私もそうでありたいなぁ、忘れないようにしなくては、と思うのでした。




そしてみんなまどかマギカ、観ようぜ。



余談
まぁ言うて冒頭にも書きましたが、私自身この物語に出会って共感してべろべろに泣いた時期があって、その時は本当に見事にソウルジェム濁りきって魔女化手前か、何なら魔女化してたかもっていう状態でした。でも今の推しに出会って、ソウルジェムが浄化されての今になります。もちろん推しながら何度もソウルジェムは濁りかけてきましたが、適度な距離感とリスペクトを大切に出来るところで、都度ソウルジェムを浄化してくれます。たぶん今後仮にソウルジェムの力を使い果たしても、きっと魔女化せず円環の理に導かれていける気がします。それは私が偉いでもすごいでもなく、そうしてくれる推しがすごいんですよね。出会えてよかったなぁって本当に思います。向こうはやべーおたく釣っちまった!って思ってるかもしれませんけどね!!!笑。

*1:と言っても実際推しにとって現場に来てくれる事などファン活動自体は彼等の助けにはなっているはずなんです。ただし決してそれが恋愛等として報われることがなくなった、という意味での「意味をなさなくなった」というのがポイント

*2:そして何故かそういうおたくの方が笑える程に金や時間を使ってるケースが多い

*3:またその流れが泣ける